ドラマーの悩み、他のパートからすると「?」だったりする。
実は私、まえだけんドラムもここに気づいてから無駄な気苦労、意味のない取り組みがなくなり、大変楽しくなりました!
こんにちは!ビーツ・アップ 前田 憲です♪
スタジオでセットを叩いたとき、
「なんか違う」
と思ったことはないでしょうか?
- 例えばやたら低い
おそるおそるチューニングキーで締めてみると・・・「ポツッ」っていうしょぼい音になるし・・・
- 自分のイメージしていた音と違う
いつも聴いている「好きなバンドの曲」は、こんなドラムの音ではなかったはず・・・
自分は、チューニングのやり方をまちがっているのか? そんな疑問がわいてきてもおかしくないですね。
でも考えてみてください。
実はドラマーの感覚って、ミュージシャンからちょっとずれている事が多いのです。
たとえば、「タムの音程をソミドにする」みたいにする人もいる。
恥ずかしながら実は私、これやったことあります。
もちろん、こういうのもありかもしれないが、妙にドラムが音程を主張して、耳のいいメンバーからは必ずクレームがくる
「ちょっと、チューニングずらしてくれへん?曲と合ってないからっ!気持ち悪いねん。」
・・・と。
この一言でなえてしまう人も多い。 ものすごい気合い入れて完成させたのにねえ・・・(事実わたくしも凹みました)
でもこれは当然の結果なんです。チューニングが上手ければ「自分好みの音」を出せる、またはマスターして「出したい」と思っている。でもそれは自分だけの世界での話。決まって的外れな事をしてバンドから不評を買う。
つまり、 チューニングが何のためにあるかをわかっていないから起こる悲劇なのです。 こういう人はたいてい「皆がドラムに何を求めてるか」をリサーチしていないから、演奏でも同じように行動し、的外れなことが多い。
もしあなたが周囲から「アタマ一つ」ぬきん出ようと思ったら、そして、ドラムを通じて楽しい人生をおくりたいなら、この考え方では100%無理でしょう。しばらくの間は音楽で幸せにはなれません。
あなたの耳ランクは?
チューニングのみならず、いい演奏をするには「いい耳」が必要。 「いい耳」の条件、数ある中から2つを書いときます。
- 楽器が「よく鳴っている」「鳴っていない」かがわかる。
- CDなどのメディアの音から、どんな生音かをイメージできる。
賢明な読者の皆さんは
「結局、現場で生音を経験しない限り」耳は肥えない
ことに気づいたのではないでしょうか? なぜなら、生音はメディアの音と比べて遥かにうごいているし、ものすごいたくさんの表情がある。 そこを知らずに、CDやメディアの音だけ聴いていても、本当の音の事はわからないのです。
当然のことながら、いっぱいエフェクターかけて加工してありますし。
話を元に戻しましょう。
一体、何のためにチューニングする?
以下、どうぞご覧下さい。
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目次
- <1> チューニングはなんのためにあるのか? その「目的」
- <2> 絶対にうごかせない3つの「条件」
- <3> 調節のコツ〜各パーツの「相関関係」
- <まとめ> 耳ランクをあげるための提言
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<1> チューニングはなんのためにあるのか?
要するに、自分のためにチューニングするのではないという事。
この点を肝に銘じよう。 では一体何のためにチューニングはあるのか? それは、
- そのドラムが最も鳴るように
- 箱の響きに最も合うように
- バンドの編成や音楽のテイストに合うように
これが基本なんですね〜
そのあと微調整で、ちょっと自分らしくするのはいい。 つまり、バンドのため、そして「音楽」のためにやるものなのです。
ここで、頭のいいドラマーは悩む。
「じゃあ一体何を目安に・・・」と。
悩んで当然。例えばギターやピアノは絶対的な基準(440hzなど)があるから、むしろやり方を間違えなければオッケー。調律師もいる。
しかしドラムの場合は、数字で表せない「感性」を総動員しないといけないので、経験やカン、客観的にどう聴こえるかの「想像力」がいる。
リハの段階ではジャストフィットのチューニングでも、お客が入ったらぼやけてしまうとか、ジャズでは有ったりする。
結局、重要なのは場数。しかし経験の浅い方に「たくさん経験しろ」というのは正論だが冷酷すぎる。僕には出来ない。
なので今後、いろいろ経験する前に、目安を知っておいてほしい。 そして「感性」や「想像力」をたくましく育んでほしい、そんな願いを込めて以下、基準を申し上げたいと思います。
<2> 絶対にうごかせない条件とは?
チューニングする前に必ずおさえておくべき「絶対にうごかせない条件」とは?
- どんなドラムで
- どんな部屋に入った
この2つ これはもう、うごかせないものとして決まってしまってます。登山の前に地図や食料を用意するようなもの。 つまり、
- そのドラムセットがもつ得意な鳴り
- 部屋の響き
これは変えようが無い。 ってことなんです。 ここを無視してチューニングするからとんでもないことになる。 というか、ここを最大限活かすよう、人間が歩み寄るのがポイント。つまり、
- そのドラムが最も鳴るように >ピッチとサスティ−ンで調節
- 箱の響きに最も合うように >ピッチとサスティ−ンで調節
こんな感じです。 調節が不可能(というか条件になってしまっている)なものは、うごかせない。 だから、調節可能なものでなんとか折り合いを付ける。 つまり
- ピッチは主に打面側のヘッドで
- サスティーンは主に、ボトムヘッドで 調節します
あと、ドラムをアクリル板でかこったり、吸音マットを敷いたり、クッションをおいたりで、サスティーンを調節できる。 当たり前の事だけど、皆あんまり知らない。
だが、こういう考え方でチューニングすると、ものすごく場がハッピーになる。 結局、ピッチとサスティーンがコントロールできれば、あなたも「いいドラマー」へ一歩前進です。
では具体的にみていきましょう。
打面ヘッドは、「厚さ」によって得意なピッチが違う。
厚いヘッドは重いです。薄いのに比べて。 ということは、ある程度ゆるめてやらないと振動してくれません。
ロックポップス用の「ピンストライプ」などはキツく張ると魅力の無いサウンドになりますね。それはそういう理由です。
逆に、薄いヘッドは、緩めると低音がだらしなく残響し、歯切れよい音が出ない。 なので、ちょっときつめにはって、高音が目立つようにします。
ジャズやブルースなどアコースティックで使われる「コーテッドアンバサダー」などは、少々キツく張った方が活きのいいサウンドになる。 つまり、
- 厚いヘッドは、ゆるめにしないと鳴らない>低い音が得意
- 薄いヘッドは、ゆるめるとだらしない低音が出る>高い音が得意
おおむね、ロック系のスタジオは、低いチューニング。ジャズ系のお店などには高めのチューニングのセットが置いてあるのに納得がいくだろう。 つまり、ヘッド自体にも、得意な周波数が有って、もちろん幅はありますが、そこを狙ってテンションを決めるのがポイントなのです。
部屋の響きと、ドラムのピッチ。その密接な関係とは?
たとえばロック系のライブハウスやスタジオが妙に「デッド(響かない)」なのは、なるべくお部屋の条件に制約されずチューニング出来るようにっていう理由からです。
つまり、マイクで拾うので、それほど響きを考えなくていいようにしてある。 そのかわり、生音はきれいに響きません。
じゃあ、アコースティック系の響きすぎる部屋はどうすればいい?
この場合は、ドラムを響かないようにチューニングしないとダメ。 その一つの方法が「ピッチを低くする」です。
普通は、サスティーンを減らせばいいんだ!って思いますよね? すると例えば「高めにチューニングし、ミュート」してしまう。これも一つの手ですが、残念ながら「鳴りがプア」になってしまい、せっかくの生音が台無しになる。
なので、サスティーンを調節する前に「ピッチ下げる」。もちろん、その場合は裏の打面も緩める(裏側の話は少し後に出てきます)。
是非試してみてください!
シェル(胴)とチューニングの関係。
たいていのドラムはシェル厚みが6〜7mmになってます。これが標準だと思って頂いていいです。
しかし、こんな例もある。
僕がギャラもらって演奏しだした頃、あこがれのSONORシグネチャースネアを思い切って購入した(およそ18万)
さぞ重厚な音がすると思って叩いてみると・・・
コン! 高音が目立つ!!
え〜こんなんなん? 厚さ12ミリ(12プライです)もあるのにいぃ〜 って、当時は思いました。
ですが、これは当然の話。 重くて分厚く、密度の高いものの方が「高い音」で鳴るんです。
ちなみに僕はこのスネアに「アクエリアン、ジャックデジョネット(黒いヘッド)」を張ってます。ちょうどアンバサダーとエンペラーの中間くらいの「ちょい厚」です。このヘッドを、ほんの少し緩めに張って、低音と高音がバランスよくなるようにセッティングしてます。
逆に、胴が厚さが5mmくらいに薄くなると非常にレスポンスがよく、演奏していて特にジャズなどは気持ちがいい。標準的なアンバサダーヘッドとも大変相性が良い。もちろん、打面ヘッドのピッチは高めです。
という訳で、こんな法則が成り立ちます。
- 厚いシェルは、ピッチが高いから、少しくらいなら低くチューニングしても大丈夫。
- 薄いシェルは、ピッチが低いから、高いチューニングの方が魅力的。
サスティーン(余韻)
大きければ大きい、長ければ長いほど、余韻は長くなります。 ドラムの場合は、裏の皮(叩かない方)の張り具合で、余韻を調節できるので大変便利。 では、その「響き」について、以下申し上げます。
<3> 調節のコツ〜表と裏の微妙な関係
表のピッチが決まったら、裏のテンションでサスティーンを決めましょう。 もちろん、緩めるとサスティーンが増えますが、ピッチも下がります。
なので、バランスが大事。
で、注意しておきたい事ですが、 トップとボトムの関係は、スネアとタムで違う。 ってことです。 以下、見ていきましょう!
ドラムヘッド、トップ(打面)とボトム(裏側)の関係は? 〜その1:タムの場合
次の3つのケースが考えられます。
- トップ(打面)高い > ボトム(裏側)低い
- トップ(打面)同じ = ボトム(裏側)
- トップ(打面)低い < ボトム(裏側)高い
音楽の種類にもよりますが、私の経験ではこんな感じです。
- 裏の皮が緩いと、締まりのない、だらしないサウンドになる。
- 表裏同じテンションだと、あまり魅力のない音になる。
- 裏側を、表よりほんの少しきつめに張ると、歯切れの良い魅力的なサウンドになる。
なので、3がおすすめ。
もちろん、レコーディングやちゃんとマイクをかましたライブで、はっきりしたコンセプトがあるなら、1のようなチューニングも面白い。が、生音では厳しいはず。
皆さんも試してみてください。
ドラムヘッド、トップ(打面)とボトム(裏側)の関係は? 〜その2:スネアの場合
スネアは、同じドラムとはいえ、タムとこんなに違います。
- 胴が浅い
- 裏皮が大変うすい
- 裏側にスナッピー(響き線)がついている。
全く別の楽器と考えた方がいい。というのが僕の結論です。 では、それぞれみていきましょう。
- 胴が浅い
これは「響き時間が短い」という事です。 なので、タムとは違い、 1、トップ(打面)高い >ボトム(裏側)低い も使えます。
- 裏皮が大変うすい
表のヘッドと「基音」が違うので、ピッチの比較がわかりにくいです。とりあえず裏表を同じテンションで張ってみてください(チューニングキーを同じ回数だけまわします)。
倍音は裏の皮の方が高い音でなりますが、実音は裏の方が、低いです。 うすい=音が高い は、誤解です。
- 裏側にスナッピー(響き線)がついている
「ザッ」っていう音は、スナッピーの振動でつくられます。
実はこのスナッピー、「響き線」という名前がついていますが、サスティーンの観点からみると、どう考えても「ミュート」です。
ということは、スネアの場合、少々裏側を緩めに張っても大丈夫ということになります。
僕の場合ですが、響きの豊かな部屋でやる事が多いので、裏側も表側も「ほんのちょっと」緩めにしてます。
先ほども申し上げましたが、スタジオやライブハウスなら、割と高めに張って、キンキンにするのもありだと思います。 でもライブハウスでは、PAさんのやり易いようにしてあげましょう。
<まとめ>耳ランクをあげるための提言。
本当にいい音とは?
僕も恥ずかしながら、最初はよくわかりませんでした。 しかし冒頭で申し上げたように、結局は「生音を聞いた経験」が活きています。 つまり
- いいプレーヤーといっぱい共演し
- いい楽器の音をたくさん聴いて
徐々に感性が築かれていきました。
生音って、CDの音とは根本的に違う。
もちろん生音が本物。CDの音は、女性に例えれば「厚化粧」「二次元」下手したら「整形」!!
でも普段みんなCDなどの音を聞き慣れていて、逆に生音に「違和感」を感じたりする。
つまり、大半の人は「楽器の音」を聴いてないんです!
わざわざ、モザイクのかかった音をきいて、ありがたがっている。
「ほとんどの人は本物を知らない、味わっていない」という、それが世の常なんですね。
逆に、耳の肥えた人ほど、メディアの加工された音に飽きてます。 そういう人の求めるものこそが、もちろん「生音」です。
あなたは果たして、メディアを通した音から「真の姿」を洞察できるでしょうか・・・
耳ランクをプロ級にする唯一の方法は?
いたって簡単。
- 生演奏を聴きにいく
- 自分が生演奏をする
これだけ。
どちらかでもいいし、両方だともっといい。 もちろん、聴きにいくならいい生演奏、そして生演奏をするならいい楽器、そしていいメンバーとやればやるほどよい。
ただ、向上心は重要ですが、周りにいてくれる「いいご縁」は大切にしてくださいね。
で、子供のころから「ピアノをやっている子」はなんで耳がいいのか? それは、物心つく前から自分も演奏する、人の演奏も聴く、場合によってはドラムやベースとアンサンブルもする。先生が演奏家ならイイ演奏を聴いている。
こんな感じで「自然と」生の音がどんなのかを、体でしっているからなんですね。
ところが、大人になって楽器を始めると、どうしても「知識」や「理屈」が中心になって、しらんまに頭でっかちになる。 本来の音楽を「感じる」べきところと全く別の部分で、音楽を語ったりする。
そうなると、どんどん感性のチャンネルがさびてきて、的外れな存在になってしまいます。
賢明な読者の皆さんは、どうか気をつけてください!
前田 憲